僕は小さいころか体にクリームの類いをつける習慣がなかった。
これは育ってきた環境にもおおいに影響しているのでしょうが。
僕が育った環境を語れば、家族は父、母、兄、そして妹の五人家族。
父はけっこう厳格な人でしたから、男が女のような真似をすることを厳しく禁じていました。
それは、たとえばリップクリームでさえも、許してはもらえなかったのです。
まして体に塗るクリームなどは……。
こんな調子でしたから、僕は自立して家を出るまで、父の意見には全面的に従っていたのです。
十九のときに、父に内緒で大学を中退しました。
それが父の耳に入り、僕は家を出たのでした。
ここで父の厳しい忠告は、もう僕を支配しなくなる。
そんな僕も結婚をし、子どももできた。
夏には毎年リゾート地へ行きます。
ある年のことです。
たまたま泊まったホテルのプールサイドで、マッサージのサービスをしていたのです。
サービスといっても有料ですが。
嫁さんにもすすめられ、受けてみました。
マッサージをするときに、全身にクリームを塗られたのです。
初めての経験でした。
そのなめらかさと、肌に伝わる心地よさ。
思わず虜になってしまったというわけです。
そのマッサージクリームは、ホテルの売店で販売されていました。
僕はそれを迷わず購入してしまいました。
あの全身に伝わる快感を、家でも再現したかったのですが、まあ、嫁さんからしてみれば、「マッサージクリームで、ずっと可愛いって言われたい!」のでしょうが。
